Office 365「失敗できない」 展開プラン

こんにちは。中村です。

まだ「企業ポータル」から始めますか? でもお話ししましたが、「Office 365」の各サービスをどのように社内展開し活用するか?は悩ましい問題です。従業員のリテラシーが十分に高ければ「お好きにどうぞ」もアリですが、そんな企業は少数ですし、組織として最低限の統制は必要です。

また、多くの従業員にとり慣れ親しんだ旧システムからの切替えは容易ではありません。特に「Teams」「SharePoint Online」「Planner」のような、やや複雑な業務アプリケーションは適切な用途がイメージし難く、どうしても忌避感が先に立ちます。その結果、折角 Office 365 を導入したのに利活用が遅々として進まない、という企業も少なくありません。

そこで、この投稿では私の経験による「ユーザーアダプテーションを考慮した効率的で堅実な展開プラン」をご紹介します。

7 段階の Office 365 展開

Lv.1 から Lv.7 まで、着手すべき順で並べました。

まず、大事な前提としてこの順序は絶対ではありません。Office 365 の導入目的やビジネス上の課題は組織により異なります。「影響範囲(関わる従業員数) × 効果 が大きいものから着手する」を原則とし、自社状況にあわせてケース・バイ・ケースで検討してください。

また、Lv.7 がゴールではありません。Office 365 の主要な企業向けライセンスは、ほとんど全てのアプリケーションが一括提供されるため、どうしても「利用しなければならない」という気持ちになりがちです。しかし、IT はあくまでビジネスニーズありき。自社ビジネスに必要な機能をきちんと展開できているなら、それは十分「Office 365 を活用できている」と言えます。

はじめにセキュリティ(設計)ありき

「ケース・バイ・ケース」とは書きましたが、この Lv.1 : セキュリティ設計だけは必ず最初に実践してください。実際、ここを疎かにした結果、その後の普及や運用に苦慮する企業をしばしば見かけます。

Office 365 は大企業での採用を視野に入れたサービスであり、そのため、セキュリティ/ガバナンスを「ガチガチ」に固めることは比較的容易です。しかし、セキュリティとビジネス上の利便性は本質的にトレード・オフの関係にあります。高セキュリティ、高ガバナンスがビジネス的な正解とは限りません。

これを前提に「自社はどこまでセキュリティ/ガバナンスを利かせるのか?」について、あらかじめ大まかな方針を決めておくこと。それが「セキュリティ設計」です。

例えば、次のような観点で自社のスタンスを整理しておくとよいでしょう(これはあくまで一例です)

  • 従業員をどこまで信じるか(性善説と性悪説)
  • 機密情報、個人情報の管理をどのように行うか
  • 情報漏洩リスクをどこまで担保するか
  • 社用デバイス管理をどこまで厳密に行うか
  • BYOD を許すか
  • テレワークをどの範囲で認めるか
  • 情報管理をどの要素に基づいて行うか(社員/非社員、役職等)

仕事は結局メールとファイル(と Office )

セキュリティ設計の次は、いよいよ実際のアプリケーション活用です。この「失敗できない」プランでは、Lv.1 としてまず Office と Exchange/Outlook、次いで Lv2 : OneDrive for Business の展開をおすすめします。

Exchange はメール、OneDrive は個人レベルでのファイル管理と共有機能です。突き詰めて考えれば、業務は「メール(コミュニケーション)」と「ファイル(情報)」で成立しますから、この組み合わせは、最も影響範囲が大きく、シンプルで、必須度が高く、かつユーザーにもわかりやすいメリット(ほぼ無尽蔵な容量、スマートフォンからのアクセス、自動でのバージョン管理、ローカル同期、ブラウザ参照、検索、等)があります。

ファイル共有からコミュニケーションまで

また、OneDrive を活用することで、ユーザーは「共有(他の従業員にアクセス権を設定する」という Office 365 の他アプリケーションを活用する上で重要な概念に、無理なく馴染むことができるでしょう。

OneDrive for Business はあくまで個人をベースとしたファイル管理/共有の仕組みであり、組織やチーム単位でのファイル共有には限界があります。ユーザーが OneDrive に慣れるにつれ、徐々にこうした不満がで表出するでしょう。

Exchange / Outlook についても「メールの氾濫」のデメリットは、長らく指摘されるところです。次第に、メールよりライトで、クローズドかつ即応性の高いコミュニケーション手段が求められるようになります。

こうした要請に応えるために Lv.4 : Office 365 Groups と Lv.5 : Teams を活用したチーム単位でのファイル共有・コミュニケーションを展開します。

ポイントは、あくまでユーザーのニーズが醸成された上で、対応するアプリケーションをリリースすることです。Groups も Teams も(Outlook や OneDrive に比べれば)複雑なソリューションであり、ユーザーが慣れるにはそれなりの試行錯誤が必要ですが、きちんとした目的意識があれば、この過程における「とん挫」をかなり予防することができます。

ポータルは後からの方がいろいろ捗る

次は Lv.6 : ポータル (SharePoint Online) です。こちらについても、同様のアプローチをとります。

Groups や Teams はコミュニケーション/情報共有を細分化します。そのため、次第に「どこに何があるのかわからない」という状況が生じます。これはメリット(効率的なコミュニケーション)と裏表のデメリットであるため不可避なのですが、こうした不満がユーザーから出てくるのを待って、情報ナビゲーションとしてのポータルを構築します。

SharePoint は現在、製品コンセプトの大きな変更が進んでいることもあり(クラシック→モダン)、残念ながら Teams や Groups 以上にユーザーにとり難解なソリューションです。しかし、ニーズが明確でさえあれば、用途を絞った提供ができます。全社ポータルも、必要なコンテンツがあらかじめ判ればスムーズな構築が可能です。また「ポータルをリリースしたが社員がアクセスしてくれない」という、典型的な失敗を避けることができます。

時間をかけて利用アプリケーションを拡大

最後に、Lv.7 : 上記以外のアプリケーションです。Office 365 のライセンスには PowerApps、Flow、PowerBI、Forms、Stream、Planner など、特定の業務シーンで大きな力を発揮できるアプリケーションが含まれていますので、ぜひ、活用して頂きたいところです。

ただし、それぞれが強い特徴のある(クセとも言います)アプリケーションですので、それをどの業務に、どのように用いるか、についてはよく吟味する必要があります。ユーザー教育から運用まで含めた検討が必要です。これは Office 365 に限った話ではありませんが、まず限定的用途でミニマムスタートし、その成果と課題を確認した上で、段階的に利用範囲を広げてゆくアプローチを強くお勧めします。

こんな話を(も)セミナーでお話しします

実のところ、これは来週末(27日)のセミナーでお話しする内容の一部だったりします。ある種の sneak peek ですね。

セミナーは Office 365 をこれから導入したい、既に導入しているけどもっと本格的に活用したい、というビジネスパーソンの方を対象に、 東京神田での開催です。

私もコンサルタントとして、いわゆる「カタログ的な良い話」だけではなく、この記事のような「本音ベースな」内容を含めて Office 365 サービスの利活用をご紹介させて頂きますので、ぜひご参加ください。


「これから始める、もう一度始める Office 365」

主催:Expression セミナー事務局(P&A Works Company 株式会社)
協力:(株)イルミネート・ジャパン、(株)インターナショナルシステムリサーチ
日時:2019年9月27日(金)13時~17時
場所:株式会社イルミネート・ジャパン 研修センター
価格:無償
講演内容(予定、敬称略):

  • Office 365 アプリ&サービス ファーストステップ(P&A 中村和彦)
  • Office 365「失敗できない」導入・活用プラン (P&A 中村和彦)
  • クラウド型認証ソリューション「クラウドゲート」のご紹介(ISR 宇田津洋之)
  • Microsoft Teams でテレワークことはじめ (P&A 中村和彦)
  • 今話題のPower Platformを知る(イルミネートジャパン 奥田理恵)

https://expression.pa-wsc.co.jp/2019/08/05/365seminar/
https://pa-wsc.com/seminar-o365-201909/