社内規定クラウド SaaS「KiteRa」をためしてみました

私自身のことでもありますが、創業数年のスタートアップにとり、社内制度や規程はどうしても後回しにされがちです。リソースが限られるので、ビジネスを前に進めるほうを優先してしまうんですよね。しかし、こういうものは組織の基礎ですから、あまり後回しにしていると、ふとしたトラブルから会社の破綻につながりかねません。

そんな社内規程を「Webで自動作成」する SasS がリリースされましたので、これは!と無償の範囲ですが試してみましたので簡単にレビューします。

KiteRa(キテラ)

「社内規定をかんたんに KiteRaは、働き方改革に対応した就業規則や社内規程を Web上てかんたんに作成&運用てきるクラウドサービスです」

働き方改革に対応した就業規則や社内規程をWeb上で自動作成できるSaaS『KiteRa』の正式版が提供開始
社内規程クラウド「KiteRa」が芝浦工業大学支援ベンチャーとして認定
社内規程SaaS「KiteRa」を提供する株式会社KiteRaが、ライフタイムベンチャーズ、インキュベイトファンド、個人投資家から約4000万円の資金調達!IPO準備企業向け特別プランの提供をスタート

無償版レビュー

KiteRa の Web サイトから、メールアドレスで簡単にアカウントを登録できます。一社で三名まで、編集者として無償登録できるみたいですね。ところで、Look & Feel がまるきり某有名人事労務管理システムなんですが…これは最近の流行りなんでしょうか。

アカウント作成直後にヘルプのチュートリアルが表示されますがスキップ。ただ、この STEP を眺めると KiteRa がどのように使われることを想定しているかがなんとなくわかります。

ログイン直後の画面。早速「規程新規作成する」から規程を作成してみます。テンプレートの中からベースになる規程を選ぶと、ウィザードがはじまるのですが、残念ながら大本命である「就業規則」は無償版ではつくれませんでした。ここでは「リスクマネジメント規程」を選択して進めてみます。

ウィザード形式でいくつかのシンプルな設問に回答していくと…

できました!あっという間にリスクマネジメント規程ができてしまいました。所要時間は 30 秒くらいでしょうか規定は、公開したあとで改訂履歴を管理したり、注釈(FAQ)を作ったり、その規定に関連した法改正を確認したりできます。

上のログイン直後ではまだ表示されていませんでしたが、トップ画面の「診断」で、自社に必要な規定がいくつあるかを確認できます。どの規定から作成すべきか、優先度をきちんとわけてくれているのが良いですね。

なお、規程を編集することももちろんできます。エディターは WordPress のような感じです。

無償版の制限

こうして見ると、KiteRa は自社の規定類をインスタントに作成して、そのあと管理していく用途になかなか使えそうです。ただ、もちろん「無償版」には制限があります。

  • 編集アカウントは三件まで(閲覧は無制限)
  • 新規作成できる規定(就業規則以外)はひとつのみ
  • 就業規則は作成できない
  • 既存の規程(Word形式)を取り込むことはできない
  • Word形式での一括ダウンロードはできない(PDF形式のみ)

就業規則がつくれず、いち規定のみではさすがに会社で正式運用するには苦しいですね。無償版は実質的に「トライアル(お試し)」だと考えるのが正しいかと思います。

KiteRa でざっくり何ができるのか

KiteRa でできることを大まかにまとめると、こんな感じでしょうか。

  1. 自社の規模や雇用形態にあわせて「必要な規定」を判定してくれる
  2. そこからテンプレートベースの規程を即「作成」できる(30秒!)
  3. 規定を編集、管理できる(版管理/公開/廃止/FAQ作成/関連法規の表示等)
  4. 既存の規定も KiteRa に取り込める
  5. 法律改正情報をポイント解説つきで提供してくれる
  6. 規程(版差分含む)をまとめてダウンロードできる

サービスとしては 1番、2番(規定の作成)がアピールポイントになっている訳ですが、私が実際に触ってみた限りでは、むしろ 3番 4番(規定の運用)こそがサービスのミソなんじゃないか?という気がしています。規定を版管理するだけなら、それこそ G-Suite(G drive)なり Office 365(One Drive for Business) なり、いくらでも汎用ツール/サービスがありますが、 KiteRa なら、「自社には何の規定が必要か」「内、どれが既に存在するのか/しないのか」を常時きちんと把握できる点は、とても優れていると思います(僕はいつも全体像が見えていないと不安になるタイプです)。

加えて、いち経営者としては、法律改正の情報をきちんと解説付きで、規定に紐づけて提供してくれるのもありがたいポイントです。まあ、現状では 2019年の4月で情報が止まっているのようですので、今後きちんとアップデートされていくのか少々不安もあるのですが。

KiteRa の有償プラン

前述のとおり、無償版の位置づけが「お試し」なので、実質的に有償プランが基本になります。詳しくはこちらの価格ページを参照してください。

  1. スタンダード
  2. IPO準備企業むけ特別プラン
  3. プロフェッショナル

「スタンダード」が基本プラン。「IPO~」は本格利用するある程度規模のある企業向け。「プロフェッショナル」はさらその上位…ではなく、社労士さんやコンサルタントなど、このサービスを自社の「業務用途」でツールとして用いる場合の契約です。

「スタンダード」プランを前提に、実際の費用を想定すると、ほどほど良いお値段になります。イニシャルが約 100,000 円/年。これだけですと作成できる規程は 5 つですから、少し追加も必要です。追加枠はワンショット 75,000 円なので、仮に、診断された 52 規程をきちんと作成すると、初年度 850,000 円+翌年度からのランニングで 100,000円/年 になります。

もちろん、作成する規定数を減らしたり、自社で独自作成した規定を登録すればイニシャルコストを抑制できますが、それはちょっと本末転倒ですよね。

個人的なインプレッション

KiteRa は「Web上でかんたんに作成」というコピーのとおり、本当にサクっと規程を用意することが出来ます。 ただ、テンプレートベースである以上、当然ではあるのですが、そこに自社ビジネス上の都合や、コダワリを反映することはできません。

なにより「本当にこれで(自社は)大丈夫なのだろうか」という不安が拭いきれない、というのが正直な感想でしょうか。サービス利用料がそれなりであることも併せて考えると、 ミもフタもありませんが、 それなら最初から社労士事務所と契約して相談した方が早いのでは?という気もしてしまいます。

このあたり、自社が「規程を網羅的に整備すること」「規程類と自社ビジネスとの整合性をきちんととること」をどの程度重視してコストと時間をかけるか?次第でサービスの印象が大きく変わるかと思います。

社内規定の整備に悩まれている方は、一度、無償版を触ってみて自社ニーズにマッチするか確認してみるのも良いのではないでしょうか。